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SRX250 整備日記 No.4


平成15年11月 4日 更新終了


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その 20

エンジン出力の比較

SRXのエンジン形式は、ご存じの通り、2種類存在する。細かな部品の違いはあるが、大きい違いは その出力である。その大元となっているのは、カムシャフトであるが、手持ちのサービスマンニュアルでは バルブタイミングの数値が書いていない為、実際に測ってみる事にした。
そこで、ダイヤルゲージ、マグネットベース、全円分度器、それらをエンジンに固定する治具を制作した。


センター出しプラグアダプター

まず、正確にピストンの圧縮上死点を出す為に、点火プラグのガイシを割り、中に6oの丸棒がスムースに 上下するアダプターを制作。
出っ張ったガイシを割るのは簡単であったが、中に入った物を割るには、センターポンチなど、先の とがった物を使い、慎重に砕いて壊した。さらにドリルで6oの穴を明け、プラグ上部には、フッソ樹脂 で出来た「ルーロン」というNTN製滑り軸受けを入れた。動作はとてもスムースである。



センター出しプラグアダプター

クランクシャフトの正確な角度を計る為に、まずは製図用の直径120oの全円分度器をフライホィールの センターに、アルミの円盤を土台として固定し、角度を示す針を制作した。
念のため、フライホィールの合わせマークの正確さも調べたが、問題無かった。分度器の「ゼロ」はどこでも よかったが、ホイールを回転させる作業中に分度器がずれる事を確認する為、フライホィールの 合わせマークと、分度器の「ゼロ」を合わせた。針は針金を曲げた程度の物でも良いのだが、余った アルミ板を加工し、大げさな物を作ってしまった。



インレッド側マグネットベース

マグネットベースをエンジンに固定するベースを制作。
これはインテーク側。こちらは、15oのアルミ板に、建物補強用の鉄のアングルを取り付けた。



インレッド側マグネットベース その2

エキゾースト側は、これまた大げさな物を作ってしまった。15oのアルミ板を直角になるように ネジで固定し、そのままではマグネットが付かないので、作業面に鉄の板を取り付けた。
読まれている方々、不思議に思うかも知れないが、同じ物を作っても面白くないし、自分の工作技術の 向上の為、いろいろと工夫を凝らしている。工作技術と言っても、ボール盤とヤスリで作った 物である。工作機械が有るわけではなく、すべて手作業。そこがまた面白い。
インレット側、エキゾースト側、共にシリンダーヘッドに4個のネジで固定するが、その位置出しには とても苦労した。光明丹を使用して、型取りしても、1oくらい狂っていた。パッキンなら問題ないが、 さすがネジ穴だと、それでは貫通しない。その苦労がまた面白い。



取り付けたマグネットベース

取り付けたベースに、マグネットベースを取り付けて実際にバルブタイミングを測ろうとしたら、 マグネットベースの問題発生。
右側にあるのは、ヘビの様にフレキシブルに動くタイプ、左側は昔からの関節タイプ。
フレキシブルタイプは、ワンタッチでダイヤルゲージを任意の場所に固定出来るが、写真の様に、 円弧がきついと、どんなに固定ノブを固く固定しても、動いてしまう。測っているうちにどんどん数値が 大きくなる。構造的欠点である。
フレキシブルと言っても、そもそも昔遊んだ蛇のオモチャの様な構造で、中にワイヤーが仕組んであり、 マグネットベース側にそれを引っ張るカムが仕組まれているらしい。フレキシブルの首の部分の部品の 精度が悪いのか、中に仕組まれているワイヤーの強度が有り余るのか、高額の工具の割にあまり使えない。 やはり、簡単な構造の方が扱いやすい。ちなみにフレキシブルタイプは「KANETEC」と言うメーカー である。そして関節タイプのメーカーは「新潟精機」の物である。
「新潟精機」の物は、第二関節に角度調整用のノブが付いているので調整しやすい。これだけでも 十分な価値はある。
ちなみにこの写真は、圧縮上死点を探している所である。



マグネットベースとダイヤルゲージ

使用したダイヤルゲージは、20oまで計測出来る物で、精度は1/100oである。バルブのストローク を計るには最低でも10o、20oあれば問題無い。
問題はその先端に付ける測定子である。バルブステムに垂直にゲージを取り付ける事が正確にバルブの ストロークを計る事が出来る。そのために専用の測定子が必要となる。
ダイヤルゲージの先端には専用の測定子が付いているが、それを取り外すとメスネジが現れる。サイズは M2.6(?)である。それ専用のダイスを買うのも嫌なので、手持ちのステンパイプ(内径2.5o) を50oほど切り、先端にM2.6のボルトをほんの少し差し込み、銀ローでロー付けし、頭を切り落とし 反対側にはカーテンのつり下げフックを曲げて、同じくロー付けした。それをカムの曲面に合わせ、 曲げて使用している。



ダイヤルゲージの先端

これがダイヤルゲージの先端と、タペットが接地している写真である。測定するまで、何回もクランクを 回し、他に接地しているかどうか、確認してからバルブクリアランスを測定した。



実際のクリアランス測定には、かなりの熟練が必要である。特に単気筒は、バルブを押す抵抗がプラスなり マイナスなり、クランクを回す精度に影響する。プラスなら「進まない様に」、マイナスなら「戻らない 様に」、常にフライホィールが逆に回らないように慎重に作業を進めた。それでもダイヤルゲージや、 マグネットベースの強度など負の要因が多い為、何回もクランクを回し、測定した。
妥協出来る値が出るまで何回も回した。その手の本によると、クランク回転が10度くらいで測定している らしが、当方は5度で測定した。2回クランクを回すと、ダイヤルゲージの「ゼロ」はもう2メモリも 狂っていた。悪い時には5メモリである。どう考えても、マグネットベースの剛性不足が、ダイヤル ゲージのアダプターの剛性不足である。しかし、ある本には「燃焼そのものが不規則な現象」と書いてあった 事を思い出し、あまり神経質にならぬように適当に測定した。それでも2日ほどかかった。
最大の注目点は、どの時点でインテークのバルブが開き、どこでエキゾー ストのバルブとオーバーラップするか、バルブ開閉の時のストロークの推進量が問題らしい。しかし、 所詮ストリートバイクの純正部品の比較であるので、IN、EXとも2回計測し、その平均を採用した。

すべての計測を終わり、Excelデータにした物が下記の物である


カム比較図

注) 1 クランクシャフトの回転の始まりは両方とも圧縮上死点とした。
注) 2 クランクシャフトの回転数とリフト量に関しては、すべて中古品を使用したため、 メーカー発売当初の性能を維持していない。特にエキゾースト側のカムの外径 については、使用限界に近い。
注) 3 バルブリフト量の単位は、100分の1である。「100」は1oである
注) 4 このデータについての責任は、当方の責任ではなく、すべては測定誤差による。
注) 5 すべて「酔っぱらいの戯言」と思って欲しい。

測定時の部品の誤差も関係してくるので、念のため、カムシャフトの外径も測定をした。その結果、 約1.5oの差を測定した。

結果として、U型のカムは、単にバルブのストローク量を減らし、吸排気効率を下げる手法で、 馬力を下げたと思われる。カムプロフィールも特に変化が無いので、単純に全域で馬力が下がっている と思われる。手元にU型のサービスマニュアルが無いので、その性能の比較はあくまでも私個人の 判断である。

それにしても、カム山を眺めて「まるで初心者のエンジンの解説に出てくるような、メリハリの ない、ただ出っ張っただけのカム」だと実感した。手元にあるCB400fourやCBX750 のそれは、「少し荒立った、打ち寄せる海岸の波」の様な形をしている。 このデータに付いての責任はおえないが、今後単気筒の単車のエンジンを分解した時のデータのして 取っておきたい。皆さんが欲しがっているバルブ開度については、上のデータを元に推測して頂こう。 今後、ハイカムの需要があれば、このデータを元にいろいろと考えて行きたい。




その 21

Fフォークイニシャルアジャスターの制作

サスペンションのセッティングを出す作業をしていると、どうしてもFフォークのイニシャル アジャスターが欲しくなってきた。もちろんSRX250用として、社外パーツを入手する 事は、今は不可能である。ある日、F選手が「SR、TW用のイニシャルアジャスターが 簡単な加工で装着できるよ」と言われ、早速購入。実際に取り付けてみると、ネジサイズは 同じであったが、インナーチューブ径が35o用なので、フランジ部分がはみ出してしまう。 まあ、その部分はヤスリで簡単に削り落とす事が出来たが、内側のEリングがスプリングと 干渉してしまうので、少し改良した。


イニシャルアジャスター 1

左側がノーマル、真ん中がPOSHのイニシャルアジャスター改造前(中心の穴は私が加工した) 右側がそれを改良した物である。ご覧の通り、改造前のそれのEリングがかなりはみ出している。

このままでは、精神衛生上良くないと思い、まずセンターにM6ネジ加工した。



イニシャルアジャスター 2

スプリングを押すアルミのワッシャーを固定する為、アルミスペーサー(サイズ 外径17o ×内径10o、高さ5o)をはめ込み、M6ネジで固定。万が一の事を考え、ネジロックも 使用した。

出来上がった物を比べてみると、スペーサーを入れた分だけ(5o)、出っ張ってしまった。 Oリングはパッケージに付属していないので、ノーマルを使用した。



調整出来るストロークは、測り忘れたが、大体20oと記憶している。

ついでに今まで使用していた、フロントフォークを分解清掃することにした。今まで 何回かフォークオイルを交換しているが、そのたびに抜いたオイルに金属粉が混じって いたので、「これはたぶん、スライドメタルが減ってきたのだろう」と考え、スライド メタルの交換も行った。いろいろなフロントフォークを分解してきたが、改めてSRXの それを分解してみて、驚いた。スライドメタルは、アウターチューブに一カ所しか入って いない。なんとも情けないフォークである。しかもこのスライドメタルが間単に取れない。 タガネを使用したり、リューターで削ったり、予想外に大変な作業であった。

組み立て時に、オイルシールの上下の向きを間違えてしまって、 なんとオイルシールのリップに付いている金属製のリングバネ(これが 正式な名称がどうかは不明)がはずれてしまい、せっかく新品にした、スライトメタルと インナーチューブに傷を付けてしまった。なんとも自分が情けない。傷を、耐水ペーパー で取ろうとしたが、きれいには取れなかった。オイルを入れる前に動作確認をしてみると、 少しザラザラした感触がある。でも、「まぁ、いっか!!」 と、変に納得。まだ2セットフロントフォークがあるので、取り敢えずこのまま使用することにした。 フォークオイルは、YAMAHA G−10をそれぞれ240cc入れて、しばらく フォークの調子を見る事にした。

前回のレースでは、「イニシャルアジャスターは使用不可」と言われた参加者がいたので、 この状態でレースに望むのは考えものであるが、まあセッティングが出てしまえば、 イニシャルを加えた分だけ、他のスペーサーを入れ、ノーマルのキャップをはめれば 良い事なので、心配はしていない。




その 22

コンロッド交換と新エンジン制作

去年の6月のレースあたりから、ブローバイホースに、揮発した オイルが溜まりだし、そろそろピストンリングがすり減ってきた兆候が見え始めたのと、 エンジンの振動が目立ち始めたので、練習走行を行うと同時に、新規にU型(3WP)のエンジン を見つけ、新たにエンジンを組み上げる事にした。
3年前には、クランク本体も新品を購入し組み上げたが、エンジン内部の部品に余裕が あった為、今回はコンロッドの交換をしてみる事にした。

もちろんこれは道具が無いので、専門の業者にお願いした。クランク本体は、2000年まで 使用していた物である。新品のコンロッド、ベアリング、スペーサーを購入し、クランクの 芯出しまで、お願いした。「レースで使用します」というと、「0.01ミリは出しておきます」 と返事が帰ってきた。まあ、このくらいの加工は簡単であろうと思っていたが、一つ落とし穴が あった。

SRX250 整備日記 No.1では、書き忘れていたが、初期型の コンロット大端部には、オイル穴が空いていないが、後期型には、進行方向前側の1カ所に オイル穴が空いている。 例の如く、メーカーがいつの間にか変更を していて、新しいコンロッドには、それがあるのだ。そこに「落とし穴」があった。


古いクランク、コンロッド 新しいクランク、コンロッド

左側が今回新しく組み上げるエンジンから取り外したもの。右側が古いクランクに新しい コンロッドを組み込んだ物。コンロッド大端部にオイル穴があるのがご覧頂けると 思う。クランクの両端を比べて頂きたい。向きがまるで反対である。なぜこのような事が 起こってしまったのか?

理由は簡単である。コンロッド組み換え時に、オイル穴の向きを言い忘れた。おまけに 組み替えを行ってくれた人が、コンロッド側面に打刻された、メーカーの文字の方向を 同じにして組み上げてくれた。
「メーカーの刻印は同じ方向」と思うのは、通常整備をしている常識であるが、 YAMAHAの考えは逆であった。コンロッドの向きが逆なのである。 「これは大問題だ!!」とあわてたが、「待てよ、クランクにはクラッチ側から オイルが入り、コンロッド大端部から抜ける。抜けたオイルは、遠心力でクランクに 放出され、そのうち少しはシリンダーの潤滑になるはず。前側からオイルが出ようが、 後側から出ようが、この際あまり関係ない。」と。そしてまた、 「まぁ、いっか!!」と勝手に納得。このまま組み上げる事にした。

エンジン組み上げは前回と同じ様に、すべてのベアリングを新品に交換した。改めて ここに書く事は無いので、省略する。




その 23

2号機の組み立て

新しくゼロからレーサーを制作するのではなく、不具合があると思われる、エンジン、 フレームの交換を行い、2号機を作った。

フレームはN選手から頂いた物。各部にサビが発生していたので、サビを落とし、 脱脂後、まずはラッカースプレーで黒く下塗り。乾いてから2液ウレタン(共に 缶スプレー)で仕上げた。新規に交換した部品は、ステアリングベアリングのみ。
残りの部品に変更は無い。作業は簡単と思われたが、次の練習走行まであまり 時間が無かった為、S選手のご協力を頂き、まずは1号機から部品を外し、新しい フレームに取り付けた。5時間ほどでエンジン始動まで、進んだ。これって 早いのか、遅いのか? 誰かご存じ?

2号機、シェークダウン 外観上の違いは、エンジンがU型になりシルバー塗装、フロントフォークが 「その 21」で組み上げたもの。残りのパーツは今までと同じ。



フロントマスターシリンダー

ついでに、前回のレース直前の転倒で、大きく削ってしまったマスターシリンダーを TZR用の物に変更。今年から「同一メーカーでボルトオンの物なら交換可」と レギュレーションが緩くなったので、あえて交換してみた。この角度なら ブレーキオイル面が水平でメンテナンスしやすい。

しかし、「ボルトオン」には、語弊がある。フロント関係が三叉ごと交換出来れば 装着して良いのだろうか? 謎である。



そして、ドキドキのナラシ走行。エンジン回転を、7000rpm、8000rpm、 と制御しながら、30分の走行を走り、1回目のオイル交換。使用したオイルは HONDA純正 ウルトラ S9である。オイルは真っ黒で、金属粉も混じっていた。 もちろん2カ所あるオイルフィルターも清掃。エンジン組み立て時についたウエスの 糸くずで、大分詰まっていた。

そして2本目から、10000回転までのナラシ走行。でも、なんだかエンジンが回らないし、 フロントブレーキが効かない。なぜ???「そういえば、エンジン組み立て後、 プラグの穴には,めくら蓋がわりに古いプラグを挿入していた。これが原因だ」と 思った時はすでに練習時間終了。あぁ、情けない整備である。 走行後フロントキャリパーを分解してみると、なんと パットピンに段付きを発見。これではパットが自由に動かない。これまた情けない。 何とかエンジン始動までには行き着いたが、今後問題が多そうだ。




その 23

新エンジン クラッチ不調

その後30分の練習を4本ほど走った。エンジン自体の固さは無くなってきたが、また タコメーターが壊れた。タコメーターの針の動作が、まるで筋肉痛の二の腕の様に「プルプル」 震えている。「また壊れた!!」と思っていたが、ある日飲みながら考えていると、以前の マシンにも、エンジン組み立て後に同じ様な症状が出た時期があった事を思い出した。その時の 原因は、クラッチが滑っていた事を思い出し、もしかして今回も同じかも知れないと思い、新品の フリクションプレート5枚注文して、交換することにした。


クラッチ交換風景

クラッチ如きの交換に、いちいちオイルを抜くのも面倒なので、考えついたのは、この方法で ある。単車を何かに寄り掛からせ、エンジンオイルが抜けない程度に傾けると、簡単に行える。
単車の向こう側には、アウトドアの椅子を置いた。普段からこんな具合に整備しているが、 この作業を見ていた人から、「頭いいですね!!」と関心されたので、調子に乗って、写真を 撮ってしまった。



変色したクラッチプレート

しかし、問題はフリクションプレートだけではなく、クラッチプレートも、青黒く変色していて、 クラッチ全体の問題であった。そもそもこのクラッチ一式は、このU型のエンジンに付いていた物で、 組み込む時には不安を感じていた。
左側が、焼けたクラッチプレート。右側は、予備部品のプレート。実際の所、焼けたクラッチ プレートが、果たしてクラッチ滑りの原因になるかどうかは、不明であるが、精神衛生上問題あり と思い、交換した。スプリングの自由長も測った ら、0.5oほど短かったので、これも予備部品に交換した。



結局、部品の調達に時間が掛かり、1回目には、フリクションプレート、2回目には クラッチプレートと、スプリングを交換した。

交換後、タコメーターはきれいな円弧を描いて上昇するようになり、練習走行でも、きっちりと ふけ上がるエンジンになった事を確認した。タイムも徐々に向上し、もっと走り込みたい気持ちで あるが、もうあと4日でレースである。

そんな作業をしていると、ライバルのS選手が、浮かない顔をして登場。なんと、エンジン不調 との事である。偶然にも、当方のトランポには、1号機のエンジンがあったので、これを貸し出す事に した。これでまた、バトルが出来る。反面、他人にエンジンの調子を見て頂けると思った。

次のレポートには、レースの結果がかけると思う。まあ、どんな結果になる事やら!!自分の順位も 気になるが、貸し出したエンジンの順位も気になる。




その 24

レース直前 Fブレーキ不調

レースの2日前の練習では、そろそろ昔のタイムまでに戻そうと、必死に走っていたが、何か フロントブレーキのタッチが変。「その22」で発覚したパッドピンは、新品に交換したのだが、 レバーをいっぱいに握るまでは問題ないが、そのままキャリパーのピストンがパッドを押している 状態から、しばらくすると、またレバーが握れてしまう。コーナー進入で、ブレーキをかけ始める 時は、良く減速する。その後、単車を寝かし始める時、さらにレバーが握れてしまい、寝かしている 途中でフロントブレーキがさらに効くのである。タイヤのグリップが良い為、転倒する程では ないが、コントロースしにくいブレーキになってしまった。

これでは、コーナー進入が満足に出来ない。あわててキャリパーを分解してみると、パッドベース の金属板の側面、キャリパーと接触する部分にプレス加工のバリを発見。しかも、そのバリが キャリパー本体に、「溝」 を作っていた。どうやら、パッドが自由に左右に動かず、上記の様な 症状が出たようだ。

パッドベース板のバリを、ヤスリで平坦にし、しかも丸みを付けると共に、キャリパーの「溝」が 無くなるまで、キャリパー本体にもヤスリをかけた。おかげでパッドはキャリパー内で、進行方向 に約1o程、動くようになってしまった。この状態で組み上げ、早速レバーを握ってみると、 何とか、「2段ブレーキレバー」の症状は納まっていた。ウオームアップエリアで試走してみても 、問題なさそうである。

しかし、キャリパーとパッドの隙間が大きくなった為、今後また同じ症状が出るであろう。 家に戻り、予備のキャリパーを観察して、「これに交換しようか?」と考えたが、 レース直前だったので、辞めておいた。 さて、本番ではどうなる事やら。




その 25

2003

TUKUBA TOURIST TROPHY in  JUNE

平成15年6月22日(日)

1週間前の天気予報とは裏腹に、とても良い天候に恵まれた日である。ピットクルー2名を ピックアップして、6時前にツクバに到着。いつもと駐車場の風景が違う。今までに無く とても混んでいる。NTクラスに出場するM選手が場所を確保してくれたおかげで、何とか コースに近い場所に車を取れた。

今回より、前日受け付けが出来るようになった為、少しは時間の余裕がある。そして パンフレットも受け取っていた。なんと32台出場である。フルグリット状態。あと数台 参加台数が多ければ、2レースになるはずであった。惜しいことだ。

とても混んでいてピットは確保出来なかったが、M選手のテントを張る場所だけは確保出来た。 装備品と単車をそこに運ぶ。ピットスペースはテントだらけ。「まるで、TTTではない様な 風景だ」とSチーム監督。今までのレースならば、NS−2マシンが目立っていたが、 今回は、外車が多い。単車も大きいし、チームテントも大きい。総勢270台の単車とチームである。

さて、車検は無事終了。スタンドでガソリンを入れていると、前回のレースで接触したF選手が 声をかけてきた。彼は接触の事をとても気にしていたが、もう終わった事だし、「今日のレースを 楽しみましょう」と、お互いに檄を飛ばした。

同じクラスに出場するT選手も、単車の置き場に困っていたので、M選手のテント脇に何とか 単車を滑り込ませた。今年もて耐に一緒に出るNTのY選手が場所を探していたが、なんとピット が空いていたので、そちらに陣取る。なんともラッキーな人である。ところでいつもにぎやかな グースのT選手は、なんとレース直前で、キャンセルしたそうだ。1カ月程前、練習中にエンジン ブロー。その後エンジン載せかえまで手伝ったのに、残念である。レース後のジャンケン大会の 有名人「鉄ちゃん」がいないのか、淋しい。

予選

そして予選の始まりである。今回は、いつもの予選と異なり、とてもドキドキしていた。理由は 2つある。まずはマシンの状態、そしてタイムである。フロントブレーキの状態と、新しい エンジンがどれ程早いのか(遅いのか?)、そして2月のレース直前まで出ていた、14秒台の タイムが出せるかどうかである。緊張していたので、また歌を歌いながら、1週目を走った。

ファイト!!  戦う君の歌を、戦わないやつがわらうだろう。
ファイト!!  冷たい水の中を、震えながら登って行け!!

たしか、こんなフレーズの歌があったはずだが、題名は思い出せなかった。

ピットサインは、タイムと周回数を出すようにお願いした。前回で、残り時間を間違え、 最後の周回でタイムを抜かれ、ポールポジションを逃したからである。今回ポールポジションは 狙えない事は判っていたが、予選時間最後にベストを尽くせる準備をしておきたかった。 路面はドライ、気温も高かったので、3週目からタイムアタック。今回の目標は14秒台である。 フロントブレーキの「2段ブレーキ」症状は、かなり納まっていたが、それでもまだ、レバーの 挙動が変。しかし、新品タイヤを信じて走っていた。 4週目のピットサインは14秒。ひとまず安心。もう少しタイムを上げたい。幸運な事に 前には単車が見えない。そのままクリアーラップを取るが、ピットサインは14秒。小数点以下 まで出してくれるようにお願いすれば良かったと反省。フラッグタワーでブラックフラッグが 出ている。風圧と単車の振動で、ヘルメットが揺れるので、一瞬それが「9」に見えた。 「もしかして私?」と思い、もう1周して、確認すると、ゼッケン「5」である。
電光掲示板を覗くと、当方のゼッケンは 表示されていない。「トップ連中は12秒台か、ならばもう少しタイムアタック」と、思っていると 遅い単車数台に追いつき、少しラインを外して追い越す。が、その内の一台にインを刺された。 「そんなに突っ込みが早いなら、もっといいタイム出せるでしょ」と思いながら、裏ストレートで、 呆気なく抜けた。「エンジンの調子がいいみたい」と、一瞬自惚れてしまった。 9週を終えても、まだチェッカーが出ない。今までの予選では考えられない周回数である。 「もう少し頑張ろう」と思ったが、他の単車と絡んだりして、思うようにラインが取れず、 結局、11週でチェッカー。

公式予選結果が出て、びっくり。13秒台が3台、14秒台が8台、15秒台が3台である。 入門レースとは思えないような、接戦である。結局当方のグリットは11番手。何とか14秒台 の後半で、まずは第一ハードル通過である。貸し出したエンジンで参戦しているS選手は、 13秒を出していた。「振動が多い」と言っていたが、彼のキャブセットアップの手腕は たいした物だと実感。当方が組み上げたエンジンの実力を、逆に見せつけられた。もともと腕の良い 選手なので、安心して貸し出した甲斐がある。先週練習走行で、「引っ張って」と言っていたT選手、 彼も13秒台。寿司でもおごってくれ。まあ、私が引っ張ったからといって、彼が早くなった 訳ではないが、交通事故のリハビリとして、少しは貢献したと思う。

決勝

決勝までには、大分時間があった。NTの予選が始まるので、M選手、Y選手の手伝いをしていた。 NTの予選が始まったが、Y選手の様子がおかしい。メインストレート後半で手を上げている。 明らかに減速の合図である。そのまま4週程でピットイン。調子が悪そうだ。彼もクラッチに 問題を抱えていたが、今回は別のようだ。そんな事をしていると、自分の決勝スタート前チェック をすっかり忘れていた。あわてて暖気運転をお願いし、急いで着替えて、スタート前チェック を無事通過。ミーティングが始まっていたが、何とか間にあう。

そして決勝レースが始まる。今回チーム名を書き忘れ、選手紹介では、名前だけである。少し 淋しい。隣には、前回のレースでもおなじみのM選手、「最近この組み合わせが多いですね」と 声をかけられた。「また、インを刺されますね(笑)」と言ったが、それはまさにその通りになった。

日章旗が降り下ろされ、無事にスタート。インから、M選手の単車が伸びてくる。目の前は 大渋滞。1コーナーに差しかかると、私の前に道が出来る。すかさずその道を進む。出口では 予選3番手のT選手を抜かす。1週目を終えると、ほぼ1列になっている。2週目のダンロップ 下のシケイン出口で、1台コースアウト。エンジンを貸したS選手である。 転倒せずにそのままコースに戻るが、戻る頃には当方が先に出ていた。最終コーナーでは、 彼の単車のフロントカウルが、左側の視界に入る。彼の方が早いのか、スリップストリームを うまく使ったのか、私の突っ込みが甘いのか、どれが正解か判らないが、もう追いついていた。 抜かれない様にアクセルを明けるが、1コーナーであっさりインを刺された。次の週、おなじ ところで、いつの間に抜かしていたM選手にインを刺される。先頭から私までほぼ一直線。まるで GP125の様だと思った。一生懸命にM選手に付いて言ったが、残り5週ほどの時、 「後ろから刺されないな?」と思い、後ろを振り向くと誰もいない。「このまま10位が 順当な順位だろう」と思ってしまった。

まあ、前回のレースもそうだが、どうやらバトルに慣れていないし、アドレナリンが無くなって しまったようだ。そのままの順位を維持する事を考え出した。それにしても前を走るM選手、昨日の 練習走行では「しばらくぶりの練習なので、引っ張って下さい」と言っている割りには、レースでは タイムを出してくる。どうやら、三味線を引くのが上手らしい。セッティングが出ていないフリを して、相手をだますらしい(笑)。こっちは真剣に「引っ張ってやろう」と思っていたのに。

そう考えている内に、チェッカーが出る。順位はどうあれ、まあ、3番手集団の最後尾に何とか 付けた事、エンジンが良く回った事、そして、エンジンを貸し出したS選手が3位に入った事、 今まで調子が悪かったマシンでは、良い結果と思っている。

しばらくぶりに、N選手がレースを見に来てくれた。今回のマシンのフレームは彼から頂いた 物である。家庭の事情で、ここ2年くらい、レースに参戦していない。彼曰く「ストレートが 遅いね。6速に入れると失速しているみたい。1コーナーは、曲がらない単車に苦労して乗っている。 他の単車がもっとクイックに曲がっているのに」と、ありがたい助言。そろそろファイナルギヤー の変更と、キャブ、フロントサスのセッティングが重要になってきたようだ。

レース終了後、今年のもて耐プロジェクトメンバーが全員集まり、顔合わせを行った。さて、 TTTでは、ライダー3名良い結果は出せなかったが、もて耐はどうなる事やら。まあ、 今回の様に怪我が無い事を祈るばかりである。



その 26

11月のレースに向けての準備

「もて耐」も無事、怪我も無く終了した。しばらくは何もする事が無い日が続く。「もて耐」という とても大きなイベントで、心身共に疲れたのは事実であったが、それ以外にとても大きな「脱力感」が 襲いかかり、何も出来なかった。

しかし、新しく改良する事よりも、直す事が山積していたので、それら細かい事を直す事にした。

その1 電気系統の作り直し
今年フレームとエンジンは新しく交換したが、電気系統、特にハーネスは、5年程使用している。この 間、振動による断線を何回も経験し、配線は、いたるところで「タコ足」になっていた。
バッテリーからCDIに使用する電線には、太い物が使用されていた(その当時、作った自分を褒めた) ので、そのまま使用し、このU型から省略した充電関係の電装品とその配線を外し、なるべく電線が 短くなるように、車体をくくらせ、ブラブラしているとまた、振動で電線が切れる為、ストラップで できるだけ簡潔に、見やすい様に配線を作り直した。制作終了後、エンジン始動してみたが、今までと なんら変化は無かった。

その2 フロントキャリパー交換
前回、レース直前に発覚した、フロントブレーキの不調は、キャリパーに問題があった為、キャリパーを 交換。フレーキレバーがワンタッチでアジャスト出来るTZR250用別体式に交換しようかとも 考えたが、また転倒すると、別体式ではダメージが大きいと考え、やめておいた。

その3 フロントイニシャルアジャスター
「その 21」で制作した、フロントフォークイニシャルアジャスターを装着して、前後サスの セッティングを煮詰める事にした。結局ファイナルを2丁落とす事に決定した。

その 4 ファイナルギヤー変更
ノーマルの状態のギヤー比では、ツクバの裏ストレートでは、6速の恩恵を受ける時間がとても短い。 それにコーナーリングスピードが上がってくると、どうしても、4速では遅く、3速ではふけきって しまう場面に遭遇する。そこで、少しギヤー比をいじる事にした。以前から他のライダーの情報を 仕入れていたが、U型のリア周りを入れれば、すぐに 428サイズにコンバート出来るとも考えた。(その方が、ファイナルギヤーのアフターパーツが 出ていた。)しかし、タイヤサイズも変わるし、使わないリアフレーキをディスクブレーキに 変更するもの面倒だし、今使用しているチェーンは今年変えたばかりなので、 結局ファイナルを2丁落とす事に決定した。(いわゆるショート 加速重視型)。 特注品を注文し、約1カ月で入手出来た。しかし 色は指定し忘れた為、派手は「ゴールド」には、ビビッた。まあ、少し走り込んでツクバや SRXに慣れ、タイムがそれなりになった時に試してみたい。

取り敢えず今まで発覚した欠陥は直し、走れる状態までマシンを仕上げたが、ツクバへの足どりは重い。 「もて耐」で使用したSV650から乗り換えると、とても疲れる単車である。まずは振動。細かい振動 がとても疲れる。それに当方の体格ではとてもライディングポジションがきつい。「今まで、良く耐えて こんな単車に乗っていたな!!!」と関心するばかり。それに何だか走っていても、面白さを感じなく なっていた。案の定タイムは出ない。走っている感覚は14秒後半だが、Pラップは冷酷にも16秒真ん中 くらいを表示していた。こんなタイムでサスのセッティングを出しても仕方ないと思ったが、いくら 走り込んでもタイムも向上は見られない。練習の合間はとても暇。何だが緊張感が無い。ダラ〜とした ツクバ通いが続いた。ある時「生カキ」に当たってしまって、ツクバには出かけたが体調不良で 走行キャンセル。その後その時医者から出た薬が良かったのか、食欲旺盛になり、「新米」を堪能していた。 するとみるみる自分のヘソが深くなって行くのが判る。2週間後のツクバでは、練習用ツナギが きつい。4s程太ってしまった。それも、集中的に「腹」。(どうして?誰か教えて?・・・by小松政男)   裏のストレートでは腹がきつくて、伏せて走れないし、息も出来ない。 途中で走行中止。練習よりも「どうやってやせるか?」が問題になってきた。

結局、酒を飲み過ぎる事で、胃の調子を悪化させ、食べる量を減らす方法(酔っぱらいだけが 考えられる、安くて、経済的で、努力が必要ない方法)を考えだした。レースまで3週間である。
体重の問題も大きいが、「もて耐」で勉強した「後輪荷重での旋回」を体に覚えさせないといけない。 これもまた、覚える為に時間が必要。何せ今までの「乗り方」とは逆になるので、どこまで身につくか 心配である。




その 27

2003

TUKUBA TOURIST TROPHY in  NOVEMBER

平成15年11月22日(土)

今まで経験した事の無い重い体重と格闘しながら、レースを迎える事になった。その後の練習では 「本番用ツナギ」を着て、練習に励んだ。タイムは15秒フラットまで戻ってきたが、とてもレースに 参加出来るタイムではない。それでも、前後サスを少しづつ固くして行き、ベストと思われる状態 (後で調べると、前後とも、最強)。最終コーナーではチャタが出ていたが、レース用のホィールに 交換すると、少し減少して、走りやすい。ファイナルギヤーも交換してみた。裏のストレートで、 シフトアップのタイミングを見ると、今までより約15メートル程手前であった(タイムは15秒 真ん中くらい)。タコメーターの動作がおかしい。ある条件が揃うと10000回転付近で針が振れる。 エンジンオイルの色を見ると、2時間程走っただけで真っ黒。またクラッチが滑っている様だ。 常時滑っている訳ではなく、一定の条件の時だけなので、あまり気にはしなかったが、念のため クラッチの部品だけは注文しておく。タコメーターの故障も考えられたが、結局クラッチ の部品が届いても、予備のタコメーターがあっても、結局、 「何だか面倒だぁ!!」という事で(全くレース、やる気無し)、交換しなかった。 そして最大の問題、体重の方は・・・、少し減って来た。強制的に胃を痛めると、 食欲も減り、安上がりである。それでも増加した体重分は、ガゾリンを必要分、その都度入れる方法で、 総重量を減らし、ごまかした。
練習でお目にかかれた他のライダーのタイムは向上している。同い年のT選手は、14秒真ん中。6月の レースでエンジンを貸したS選手は、マフラーを変更したせいか、12秒後半、日大の連中は、14秒台。 前回のレースから成長していないのは、当方のみである。他の常勝連中は、相変わらす見当たらない。
この分だと来年のレースには出ないかも知れない。なにせ、「気が乗らない」。 まあ、今シーズンは 怪我の無いように終えたいが・・・。

当日、まずは受け付けをこなす。今回3名程参加しない選手もいるので、2レースは無理だろうとは、 思っていた。案の定、その通り。当方の他に「もて耐」に出たふたりのライダーは、NTで、ライバルで ある。「もて耐」の時の即席チーム全員の顔を見る事が出来、うれしかった。「もて耐」参加車両も、 もちろん、そのままである。スポンサーのステッカーが懐かしい。オーナーのM選手が、「何だか パワー、落ちたみたいですよ。最終コーナーの減速ポイントが大分奥になりました。」と、当惑ぎみ。 当方は「そんなにレブまで、回した記憶がないな〜。」と思い、やはり距離が長いコースでは マシンのダメージも大きいと実感した。

車検では、リアブレーキペダルの「戻り」が悪いと指摘された。検査官の手元を見ていると、力の かぎりにペダルを押し下げている。「通常、そこまでしないだろう!!」と思っていたが、指摘された ので、ゴムロープを使って、リターンスプリングの補強を行い、問題解決した。

予選

ガソリンの量を慎重に測り、予選の準備を始める。思っていたほど寒くはなく、望んでいた様には 「雨」は降らなかった。淡々と準備は進み、予選が始まる。
クラッチの不安があったので、予選のスタート時には、本番の様にスタートした。異常なし。 天候はとても良く、路面温度も十分である。2周ほどすると、前方に見えているマシンが段々 スピードを上げて、当方から離れて行く。練習の時もそうだが、やっぱり走り出すと「面白さ」を 感じる。いつもの練習の様な、緊張のない雰囲気の中で、徐々に楽しくなってきた。特に昨日の 特別走行の時にも感じたのだか、同じ排気量の単車だけだと、腹の奥の方から「メラメラ」と 音を立てて燃え上がる物を感じる。4週目くらいの最終コーナー出口で、T選手がコースアウト。 前のマシンを抜かそうと左にマシンをふったら、コース外に出てしまったらしい。アクセルを 戻したと思われた瞬間に転倒してしまった。「タイム計測されていれば、決勝に出れるけど、 怪しい時間帯だ、測れている事を祈る」と思っていた。 5週目くらいで、ピットサインを見ると14秒である。ピットと 打ち合わせを忘れていて、小数点以下の表示をしていない。「前半なのか、後半なのか」それが問題 である。適度に遅いマシンにも遭遇したが、運が良い事に、追い越し難い事はなく無事にパスして行く。 後ろを走っていたY選手は、それらに絡んでしまって離れて言った。
その後も 何回か14秒台のピットサインを見て安心してしまった。「どうせ14秒の後半だろう。グリッドは 8番手くらいかなぁ。そろそろ早い連中に抜かれても良い頃だ」と思い始めた周にベストタイムを 出していた。
予想していたより2週程多く、予選終了。1ヘヤを過ぎたところで、電光掲示板を見る。上から
「4」−−−「あぁ、S選手だ。マフラー変えてから、もう追いつかないね」
「10」−−「えっと、F選手だ。彼はもて耐も、ここの3耐も出てるし、実力からね」
「23」−−「確か日大の、彼だ。いつの間にか早くなってる。この間まで、悩んでいたのに」
と思っている内にダンロップ下。その下は見逃してしまった。

予選終了後、日大チームを覗くと、転倒したT選手の車両を、「もて耐」でピットクルーをしてくれ た、A選手が直していた。「本当は、Aのピットクルーじゃないのに、直しているですよ」と 相変わらず後輩にやさしい先輩である。転倒した本人は、あちらこちらを打撲したらしいが、 特に異常のある所はないそうだ。単車が直れば、決勝に出れそうだ。H選手は、はにかみながら 喜んでいた。

予選が終わって30分くらいで、結果が出る。その時間に合わせて、掲示板を見に行くと、丁度 張り出している時だった。自分の順位を確認する為、下から順に見て行くと、なかなか出てこない。 予想していた8番手くらいを通り越した頃、「出てない!!!?」と不安になる。そしてなんと 4番手だった。思わず「えぇっ!!」 と大きな声を上げてしまった。
その驚きよりも、トップタイムを見てびっくり。なんと11秒台が2台。S選手と、F選手である。 当方との差は、約2秒。2秒の間に4名。しかし、当方の後ろには14秒台が6名。「トップふたりの 争いよりも、3位から8位くらいの争いが激しいレース」と思われた。

「失敗した。クラッチ板、交換しておけば良かった」と一瞬考えたが、「どうせ、常勝連中は、 三味線引いていて、決勝ではあっさり抜かれるだろう」と思った。ピット内を見回すと、M兄弟選手は 揃ってマシン整備をしている。どうやらキャブの調子が悪そうだ。決勝までには直してくるだろうし、 今日の天候では、路面状況はとても良い。レースが始まれば、序盤から混戦が予想された。

予選順位を喜んでくれたのは、ダブルT選手や、当方のピットクルーA君である。当の本人は、今年 2月のレースで実行出来なかった、美少女2名によるグリッドの写真撮影会に話の重点を置いて いて、ほとんどレースはあきらめムード。前回まで用意されていた飛び賞の「T・T・T・賞」は 無くなっていたので、とても何らかの商品を持って帰れる状況ではなかった。オートバイ関係の 雑誌の取材を初めて受ける。が、先方の興味の的は、ダブルT選手の、それぞれのマシン。 きれいに仕上がったグースを見て、「こっちのマシン(当方のSRX)の方が、順位が上なんて、 とても考えられない」と、(まあ、外装関係に気を使っていないので、当方はなんとも思わない) そして、NZを見て、「うちの編集長と、来年からNZでこのクラスに出ようと思っている んですよ」と、NZの欠点やセッティングについて花が咲いた。


決勝

ダミーグリットの風景

今年になって、2回目のフロントローである。いくら予選の結果が良くても、決勝の12週で 良い結果を出さなければいけない。変に緊張してしまった。
レース前に行われるブリーフィングでは、また新しいスタート方法が追加された。「スターターが 両手で日章旗を振り上げ、振り下ろされるまでに、エンジンストップしたマシンが出た場合には、 旗竿を持っていない方の手を静かに下ろす」という物である。とてもややっこしいルールである。 前回までは、スターターが旗を離した瞬間を見定めるため、腕の動きに注目していたが、今回から 腕だけでは本当のスタートなのか判らない。ジャンプスタートしそうで不安だ。



ブリーフィングが終わると、M兄弟選手と挨拶を交わした。
「トップが11秒台なんて、早すぎますね」
「そうですね。S選手は練習でも12秒出していますし、F選手は、もて耐にも出てるし、ツクバ3耐にも 上の方の順位ですよ」
「そういう早い連中は、卒業して頂かないと・・・」と兄貴のM選手が言うので、当方は、二人を 指さし、
「そういうご両人もそろそろ・・・・」

冗談は、そこそこに、単車をダミーグリットまで押して行く。今回は、T選手の強力なサポーターの 「てっちゃん」とアプリリアの傘を広げて写真を取った。選手紹介では、当方が書いた「自己主張」は 読まれずに、淡々と時間は過ぎて行く。そして、2週のウォーミングアップランを終了し、いよいよ 決勝レースがスタートする。そして・・・。

スタート、大失敗!!

でした。

ファイナルギヤーを大きくしたため、加速が良くなったが、その分1速ではすぐにエンジンがふけきって しまう。スタート直前に、「2速スタートしてみようか?」と思ったが、テストして無かったので、 今までどおりに1速でスタートする事にした。そして、クラッチが「滑りぎみ」なのが重なり、スタート 直後にすぐにエンジンがふけきってしまい、2速のシフトアップで手間取って、あっと言う間に6台程に 抜かれた。グリット3列のライダーにまで抜かれ、ショックを受けた。フロントローから3列目までは 距離にして8メーター程離れてる。その距離が一瞬で無くなった。

1コーナーを12番手くらいで通過、アドレナリン、最大出力で、出っぱなし。 1ヘヤのイン側は大渋滞していて、スピードが落ちている様だ。そこを大外から一挙に5台程、ごぼう抜き。 とっても「快感」。その後、ダンロップ下までに、マフラーから黒煙を吐いているSRXを抜き、裏の ストレートで自分の順位を確認すると、6番手までに上がっていた。このままのポジションを維持する 事が重要になってきた。

前を走っているSRXには、1ヘヤで追いつき、ダンロップ下を過ぎると射程距離に入るが、裏の ストレートで離される。やはりクラッチが滑っているようだ。2週程チャレンジしたが、どうしても 裏ストレートで離される。最終コーナー入り口で、イン側から「OVER」のマフラーを付けた SRXに抜かされた。このマシンはストレートが早いから仕方ない。「やっぱりお金をかけるとマシンは 早くなるな〜」と納得。ここから数週は3台のバトルになるが、やはり1ヘヤで追いつくが、裏の ストレートで離される。しかし、「OVER」マフラーのSRXとの差は、前回6月のレース程では ない。ギヤー比を変えた結果がここに現れてる様だ。

「このままゴールすると、7位、YAMAHA賞だ!!」と考えながら走っていると、ついに当方の アドレナリンがガス欠状態に入った。そしてそんな事を考えていると、また最終コーナーのイン側から 黄色いグースに抜かれる。いつのまにか、来ていた。「たしか、このグースには、ヨシムラが 付いていたな」と思いだす。このマシンもストレートは早い。 「まあ、このグースが当方の前を走っていても、 YAHAMA賞は、当方の物だ」と、一人変な事を考えて走っていた。ちなみにYAMAHA賞は 「6位以下で、最上位のYAMAHA車両」と思っていたが、実際には7位の選手に送られた。とても しあわせ(?)な勘違いをしてレースをしていた。その時点で私は8位、前には黄色いグース、前々には SRX、その前には「OVER」SRXである。黄色いグースが前々のSRXを抜かすと、当方の 「勘違いな夢」も現実な世界に戻り、そして現実なレースでは、周回遅れが出始め、いよいよ前を 走るマシンとの差を詰めるのが難しくなってきた。

ダンロップ下で、確か2台目の周回遅れを抜かそうとした時、突然シルコリンのポストから黄色い 旗が降られた。2ヘヤで転倒車が出たようだ。 時すでに遅し。当方のマシンは、周回遅れを大外から抜かし初めていて、そのポスト を通過する時にはすでに追い越しを終わっていた。「あぁ、やっちまった。イエロー無視だ。確か 罰金か、警告処分だ!!」と思って一瞬アクセルを戻すが、今戻しても生姜ない。前方には周回遅れ がまた現れるが、そのまま2ヘヤのポストを通過するまで抜かせない。通過する時に転倒車を確認したが どうも、上位を走っている連中では無い様だ。(残念!!   ??)

ピットサインを見る隙も無く、「そろそろ終わりだ」と思って走っていた裏のストレートでは、前方に 周回遅れが数台見えた。その連中を、当方の前を走っている2台か抜かして行くが、当方が彼らを抜かす 時が来たのは、最終コーナーであった。そして右前方から黄色いマシンが視界に入る。「あの黄色いグース だ!!」と思い、一瞬喜んだが、別のマシンであった。

結局、8番手でゴール。同時にゴールしたライダーが、NS−2唯一の女性ライダーだった事が ほんの少しうれしかった。レース中のベストタイムは、11週目に出ている。周回遅れを抜かしている 時だ。やはり抜かせるマシンが有るとタイムも向上する様だ。

予選で転倒したT選手は、エンジン始動出来ず、決勝レースを放棄。ダブルT選手は、またふたりで バトルしてレースを楽しんでいた。「てっちゃん」に「何位だったの?」と聞かれた時が、一番 情けなかった。そそくさと軽い昼飯を食べ、早めにツクバを去る。



さて、今年を振り返ると、幸運な事に、2度もフロントローを取れた。しかし、レースの結果は良くない。 まあ、今年はフレーム、エンジンの交換作業もあり、その調整に時間がかかってしまった。これからは 吸排気系統の見直しがゆっくりと出来る。
来年はどうなる事やら・・・・。「まあ、鬼に笑われない様に、頑張る」しかないようだ。




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